【パックン】大坂なおみ選手の二重国籍が認められた!


4/10(水) 15:55配信
ニューズウィーク日本版
<大坂なおみ選手は日本とアメリカの両方の国籍を持つことができる! 日本代表にもなれるし、アメリカでの経済活動もできる>
昨年9月にこのコラム欄で、全米オープンで優勝を果たしたばかりの大坂なおみ選手の二重国籍を認めるように呼び掛けた(「日本は大坂なおみの二重国籍を認めるべき!」)。そしてなんと、早いものでその希望が叶った!もちろん、僕のコラムがきっかけで制度が改正された......という風に受け止めてもらっても構わないよ?! 

でも実は、その希望は前から叶っていたのだ。つまり、前から日本の法律は二重国籍を容認している。恥ずかしいことに、前回のコラムの根拠にしていた「日本は二重国籍を認めない」という認識が間違っていたのだ。その事実に気づかせてくれたのは、国籍法にまつわる裁判に取り組んでいる近藤博徳弁護士と、日本の国籍法改正に向けて運動中のトルン紀美子さん。いろいろ教えてくださったこの2人には心から感謝している。お礼に、ここで2人の話をたっぷりとパクらせていただこう。

では、今回こそ正しい解説を!

まず二重国籍を考えるときは、4つのパターンに分けると分かりやすい。

▼1つ目は、日本人が意図的に外国籍を取得したケース。
▼2つ目は、日本人が国際結婚などで自動的に相手の国の国籍を得た場合。
▼3つ目は、外国人が日本国籍に帰化したとき。
▼4つ目は、国際結婚の子供など、未成年のうちに複数の国籍を持つケース。

一番関心のある大坂選手が入るタイプを、最後に持ってきたのには理由がある。コラムを最後まで読んでほしいからだ! それと、多くの人はこれらを全部ひとまとめにして考えているけど、この4つは法律上の扱いが微妙に異なることをきちんと理解してもらいたいからでもある。

一番分かりやすいのは、1つ目の日本人が外国籍を意図的に取得したケース。もとい! 正確にいうと、「元日本人」だ。なぜなら法律上、外国籍を取得したとたんに、日本国籍は自動的に解消されるからだ。つまりこの場合、「二重国籍」になり得ない。決まりとして、外国籍を取得した人は日本政府に「国籍喪失届」を出さなくてはいけない。しかし、届を出さなくても二重国籍にはならない。その人は、日本の旅券を持ち続けるかもしれないし、戸籍が資料上に残るかもしれないが、それらは実体のないものになる。近藤弁護士によると、その状態の人は重国籍者ではなく、日本人のように振舞っている外国籍の人に当たる。

僕も、電話で予約を取ったりするときに「パトリック」を聞き取ってもらえなくて、「服部くん」と日本人を名乗ったりすることもあるけど、それよりかなりシビアな状態だ。国籍解消後の「元日本人」は在留資格なしで日本に滞在している場合、退去強制手続きの対象になり得るという(母国から追放されることになり、かわいそうだと思うが、この制度の感想は後にしよう)。
 
2つ目の場合は、これとまったく異なる。日本人が外国人と結婚したり、養子縁組をしたり、両親がどこかの国に帰化したり、外国人の父に認知されたりすると、国によっては、自動的にその国の国籍が与えられることもある。国際結婚おめでとう! ウェディングプレゼントは国籍! そうなると、本人の志望による外国籍取得ではないし、当然この場合、日本は二重国籍を認める



国籍はとてもプライベートな問題
3つ目のケースはまた少し違うが、日本に帰化する外国人も二重国籍になり得る。国によっては、自国籍を先に解消しないと外国への帰化をさせてくれない国もあれば、(日本と同じように)外国籍を取得した時点で、母国の国籍が自動的に解消される国もある。そんな国の人は日本国籍を取得しても当然、二重国籍にならない。しかし、それと逆に、他国に帰化しても、母国の国籍放棄を認めない国もある。そんな国の国民が日本国籍を取得した場合、日本は二重国籍を認める。

また、上記のように国籍の放棄を「絶対させる国」と「絶対させない国」のほかに、どちらでもない国もある。その国の人は日本国籍を取得したらどうなるのかというと......本人次第だ! 母国の国籍を離脱してもいいし、しなくても日本国籍を持つことができる。この場合、日本は二重国籍を認める(段落の締めがだんだんパターン化してきたね)。

では、お待たせしました。4つ目は大坂選手のように、外国人と日本人の間に生まれたり、または日本人の親の下に出生地主義の国で生まれたりするなど、ほぼ生まれつきで二重国籍になる人。その場合、日本は二重国籍を(はい、ご一緒に......)認める!

つまり、日本国籍が自動的に解消される、1つ目の「意図的に外国籍を取得した人」以外は、どのケースでも二重国籍は認められる。一般的な「常識」に反する驚きの事実だ。複数国籍は合法だ! 「合法じゃない」は誤報だ! ちなみに、片耳がないのはゴッホだ。

そもそも、なんで勘違いしている人が多いのか。それは、法律が分かりづらいからだと思う。国籍法によれば、国際結婚をした人も、日本に帰化した人も、「生まれつき」外国籍を持つ人も、つまり2つ目から4つ目のどのケースでも日本国籍をキープしたいなら、それを選ぶ「選択宣言」をしないといけない。そして、その後「外国籍の離脱に努める」ことが規定となっている。しかし、それに伴うチェック機能もなければ、離脱に努めていないときの罰則もなにもない。

これが勘違いの元。「努めなければならない」はこの場合、どうやら「努めなくても大丈夫」に近い意味だ。長年日本にいる僕は「飲みに行こうね。今度ラインする!」と言っても、まったくしない人の社交辞令には慣れているけど、法律にもそんな「暗黙の了解」が含まれていることに驚いた。

もちろん僕の職業病で、少し大げさに表現している。でも実際、「選択宣言」で日本の国籍を選んだ時点で法的な義務は果たされることになり、他国籍を持ったままでも問題はないという。現に、法務省によると二重国籍の可能性のある人は全国に約89万人もいる。そして、その数は今後も増えていくだろう。




分かりやすい法律の明文化を
その中の1人は大坂選手かもしれない。22歳の誕生日までに選択宣言をしておけば、そのまま日本とアメリカの両方の国籍を持つことができる。アメリカが課する「国籍離脱税」を納めなくて大丈夫。日本代表にもなれる。アメリカへの出入国やアメリカでの経済活動もできる。好きなタイミングでコーチをクビにしても大丈夫。
  
おっと、最後は関係ないか。というか、どれも僕ら部外者には関係ないともいえる。国籍はとてもプライベートな問題であり、他人に口出す権利は誰にもない。そう思いながら、他人の国籍問題をきっかけにコラムを2つも書いてしまった。すみません。

ということで、大坂なおみ選手の二重国籍は認められる。うれしい限りだ!

でも、だからと言って、制度を改善しなくてもいいとは思わない。まず、1つ目のケースである「意図的に外国籍を取得した日本人」にも日本国籍の保有を認めるべきではないかと思う。世界各国に移住して活躍している日本人はたくさんいる。他国で国籍取得に値する活動をしても、それが日本国籍を解消されるほど日本に実害を与えているとは思えない。

そもそも、先進国の間で優秀な人材の取り合いが続いている昨今、二重国籍を認めようとする国が増えているのだ。2つの国や文化、言語などを知る国際的な人材は貴重な資源でもある。「日本の法律で裁かれる」などと条件を付けてもいいし、同盟国に限定したり、何らかの制限を付けてもいいから、海外で活躍する日本人にも、日本と世界をつないでくれる外国人にも二重国籍を認めるべきではないだろうか。

少なくとも4つの中の3つのケースに関しては、既に二重国籍が認められているならば、こんな長いコラムを読まなくても、それがすぐ分かるように法律で明文化してもいいのではないかと思う。今のように紛らわしいままだと、外国籍を持つ日本人が、本当は認められているのに、「ズル」をしている「隠れ二重国籍」だと思われてしまう恐れがある。僕も前回のコラムで、そんな心のない言葉で多くの人を傷付けてしまったかもしれない。心から反省しているし、責任をもって正しい知識を広めるように「努めないといけない」と思っている。社交辞令ではなくてね。
パックン(パトリック・ハーラン)
3/3ページ

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最終更新:4/10(水) 20:50
ニューズウィーク日本版









  • nak*****

     | 
    法律がそんなにいい加減だったとは驚きだ。そして二重国籍の人が90万弱もいるとは。しかし各国の国民の義務やら権利の平等性を考えれば、国籍は明確にするのが望ましいと思う。

  • sleeping bear

     | 
    これはちょっと違うかな
    罰則や国籍剥奪をしないのは
    保護的に甘くしてるだけだと思うよ
    あえて、グレーに
    事情もいろいろだしね
    そこのところを積極的権利と認識するのは間違いかと

  • ********

     | 
    ”重国籍解消が努力義務であるのは国籍離脱を認めない国があるから”かと思いましたが、婚姻によって外国籍を得られても二重国籍が認められるのであれば、二重国籍容認が基本で、1番目の「日本人が意図的に外国籍を取得したケース」が例外扱いなのでしょうか。

    「日本人が意図的に外国籍を取得したケース」だけ違うのであれば、これが制定された時代の背景が関係しているのでしょうか。

    現在の国籍法は1950年に施行されています。もしかしたらそれまで”日本人”であった方々で中国籍・朝鮮籍・韓国籍へ変更した方々が日本国籍と二重国籍とならないようにするためなのでしょうか。
    元日本人の方々は出身地で強制的に転籍されたと思うので違う理由なのでしょうか。
    出生地主義ではなく血統主義としたのも既に本土にいる多国籍者が日本国籍に簡単にならないようにしたのでしょうか。
    そのあたりが判明するとこの矛盾点が解明されるのかと思います。

  • pea*****

     | 
    大坂なおみ選手を利用して二重国籍容認者を増やそうとするのはやめてほしい。
     個人の権利ばかりを追求すれば、国防が危うくなる。
     国民全員が個人の権利を主張していてどうして国の政治、経済が上手くいくだろうか?
     全体が上手く行ってこそ個人の幸せがある。
     日本人は全体が上手く行くよう自分が損をしても全体に尽くす精神を持っている。だからこそ2,600年も存続し、世界最古の歴史を持つのだと思う。自己主張ばかりしていれば国はいづれ無くなる。
     今は、日本人らしからぬ国会議員が外国人参政権、夫婦別姓などの主張をし、国を危険に晒している。
      
     二重国籍をアピールするなら、負の側面についても議論し、国防が危うくならないような対策を提案するべきだ。日本には過去にスパイが入り込んでいたし、スパイ防止法が無いので今も大勢いると思われる。

  • tng

     | 
    ただし、国会議員の二重国籍は認めてはいけないと思う。

  • んだなす(´・ω・`)

     | 
    百歩譲って二重国籍を認めたとしても税金は二重に納めるべきだ
    権利は二重に主張して義務を果たさないっていうのは駄目だろ
    不仲のお隣さんも二重国籍なんて認めてない
    そもそも二重国籍なんてのは植民地支配してた国の名残だって聞いたし

    国籍一つの人にとってはデメリットしかないだろ
    日本が危うくなったら二重の人だけ逃げられるんだから
    何を主張しても何を選んでも責任取らなくて良いなんて都合良すぎ
    それだったら外国人と結婚した方が良いって話になってしまうよ

  • THSOC

     | 
    そういう状態を脱法行為といい権利ではない。
    国籍は個人にとってセンシティブな問題であることは否定しないが、それより優先して国の防衛にかかわる重要な問題であることを忘れてはいけない。なぜなら多くの国民の生命が個々に事情が異なる個人の問題に優先するのは当然のことだから。

  • tok

     | 
    ゴーンさんのところのキャロル夫人とか見てると、パスポートが複数あって、二重国籍ってやはり問題あると感じます。

  • kar*****

     | 
    基本二重国籍は認めないほうが良い、二重国籍だけでなく何重国籍もとれるようになりテロでも犯罪でもし放題になる。7つのパスポートを持っていると発表された人もいる、最近パスポートをいっぱい持っていて夫の犯罪の証拠隠滅のため出国した人もいる。離脱を認めない国があるならそれもやむを得ない、その国の国内問題だがそんな人が日本国籍をとれること自体がおかしい、もし人権問題がというのなら国連が離脱保証証明書を出せばいい。まして多重国籍の人に選挙権を与えるのも反対更に被選挙権を与えるなんて絶対反対。

  • m*******

     | 
    パスポートは一つあれば十分だし、他国に居住・就労するなら永住権を取得すれば済む話。わざわざ二重国籍は必要ないとおもう。大坂選手のように自動に与えられるならそれはそれでいいと思う。





  • del*****

     | 
    司法、立法、行政等の公権力を行使する立場の人の多重国籍は望ましくないと思う。

  • hot*****

     | 
    細かいことはどうでも良いけど、
    国籍を二つ以上持てるアトバントージって、よくリベラルが言うような差別にはならないのかな?とかは思ったりします。
    他国の国籍持ちに準拠した権利を得難い状況がスタンダードなら、謎のアドバンテージを持ってる側を一般の人たちと平等にした方がいいとは思いますね。

  • ∂∂

     | 
    人口減少言語消失の危機に遭遇しようとしてる日本が、二重国籍を認めなかったら、おしまいだと思う。沖縄返還の時に二重国籍を認めていたけど、それがうやむやになったおかげで、高齢者が勘違いして間違って記憶した結果、二重国籍者はスパイだと言う人が湧いてきたのだと思う。アグネスのお子さんは確か中国カナダ/イギリス日本の3か4重国籍だと言っていたのを記憶している。日本を選ぶとカナダイギリス中国がもれなく付いてくるらしいけど。

  • Karamunist

     | 
    ナニが何でも彼女を日本に繋がらせようとする連中、は居る事は確かだが
    それがメジャーとはいい難いよ

    大多数は
    彼女自身が、よく考えて選べばイイ。外野が口を挟むことじゃない
    ってことだ。と、おもうしそう信じたい。

  • ブルースF

     | 
    個人的には、二重国籍国籍以上の国籍を持つのは全く構わないと思ってますが、そうなると、当然ですが、それぞれの国の法律を守らなければならなくなり、これも当然ですが、それぞれの国に納税する義務も生じると思います。

  • cam*****

     | 
    まったくもって賛同する気にならない。他国なんて関係ないんですよ。日本国籍を持ちながら他国籍も有りで良いと思うのは日本という国をグローバルの餌食にしたい人が大半でしょうね。大坂選手が何方の国籍を選ぼうと個人的に応援できると思う。

  • cok*****

     | 
    今年で22歳になるんだからそのときがきたら
    どうなってるかみんな知ることになると思う
    周りがごちゃごちゃいっても
    決定には関係ないんだから
    静かに決断を待てばいいと思うがなあ

  • *es*****

     | 
    パックンチョだか何だか知らないが煩いな、芸人さん? 以前も大外れのことわめいてたよね。本人が自分で決めることだから見守ってればいい。

    二重国籍状態の人がどんだけ居ても、それは権利じゃないから。むしろ有名人ならば積極的に"努力義務"を果たす自覚は持ってると思うよ。趣旨を理解してるならね。

    二重国籍を容認すれば社会がどうなるかは他の方々が心配されてる通り。

  • dra*****

     | 
    ようするに「努めなければならない」の解釈です。
    それで一番のポイントは、自分では「努めなくても大丈夫」と思っていても世間が(社会が、マスコミが、国が)「努めてないのでダメ」と認定した場合です。
    本人の判断よりそちらが優先することがあることを知っておくべきです。何を努力するかというと「役所で書類を提出すること」だけですから出来ないはずはありません。

  • *******

     | 
    おかしい。
    では、なぜ、日本人だけど英国や米国の国籍を取得後にノーベル賞を受賞した人について、今は英国籍・米国籍のと断りをつけて報道しているのか?

    そして、長洲未来選手は?
    他にも、親が国際結婚した日系のオリンピック選手は数々いるが、日本国籍を所有したままだとは聞いた事がない。

    これらの人々は、たまたま日本国籍放棄の手続きをしたというのか?
    凄い偶然だな。






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